山口県の先人たち 山口県ひとづくり財団

玉木俊雄「勤王志士富永有隣先生小伝」(山口県文書館 蔵)より

　1821(文政4 )年、吉敷郡陶村(よしきぐんすえむら)(現 山口市)で萩藩士の家に生まれました。藩校「明倫館(めいりんかん)」に学び、藩に出仕(しゅっし)しましたが、あることから萩の野山獄(のやまごく)に囚(とら)われの身となりました。その野山獄に、海外への密航(みっこう)に失敗(しっぱい)した吉田松陰が入ってきて親しくなり、獄を出た後は、松陰が松下村塾(しょうかそんじゅく)で教えるのを助けました。
　1859(安政(あんせい)6)年、松下村塾を去り、秋穂二島村(あいおふたじまむら)(現 山口市)に塾を開きます。長州(ちょうしゅう)が幕府軍(ばくふぐん)と戦(たたか)った第2次長州征討(せいとう)では、鋭武隊(えいぶたい)を率(ひき)いて戦いました。
　明治維新(いしん)後、藩の兵制改革(へいせいかいかく)に反対して脱隊騒動(だつたいそうどう)を指揮(しき)し、四国へ逃(のが)れますが、捕(とら)えられます。許(ゆる)されて獄を出た後、妹の嫁(とつ)ぎ先を頼(たよ)って熊毛郡城南村(くまげぐんじょうなんむら)(現 田布施(たぶせ)町)へ行き、著述(ちょじゅつ)のかたわら、「帰来塾」を開いて青年の教育に力を尽(つ)くし、満(まん)79歳(さい)で亡(な)くなりました。小説家(しょうせつか)・国木田独歩(くにきだどっぽ)の『富岡(とみおか)先生』は有隣をモデルにしたものです。

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